平成22年
第二回 定例本会議  一般質問

平成22年6月9日(水)

○中村明彦 
 本年10月18日から愛知県名古屋市でCOP10(コップテン)=生物多様性条約第十回締約国会議が開値されます。

 そのホームページから引用すれば、現在、世界中で数多くの野生生物が絶滅の危機に瀕しており、IUCN=国際自然保護連合がまとめた2009年版の「レッドリスト」には、絶滅のおそれの高い生物種として8782種の動物や8509種の植物がリストアップされております。日本においても、2006〜2007年に公表された環境省版レッドリストに3155種が絶滅のおそれのある生物種として掲載されています。

 このような状況により、現代は恐竜の絶滅以来の第六の大絶滅時代にあると言われています。しかも、一年間に約四万種と言われる現在の絶滅のスピードは、恐竜時代の絶滅速度よりはるかに速いのです。

 こうした生物種の減少の原因のほとんどが、開発や乱獲、外来種の持ち込みなど人間の活動にあると言われています。
人間は、地球生態系の一員として他の生物との共存を求めれているにもかかわらず、一方的に生物に影響を与え、絶滅の危機を引き起こしているのです。
 私たちの生活に必要な生き物でなければ別にいい、と思れる方もいるかもしれません。しかし、すべての生き物はながりあって生きており、思わぬところで私たちの生活に響を与えるかもしれないのです。

 東京都においても、平成23年度の生物多様性東京戦略の策定に向けて、現在、検討中であると聞いていますが、緑施策だけでなく、このような生物多様性の重要性について、都民に対して普及啓発の充実を図るなど、幅広い対策を展関していただきたいと思います。
 このような認識のもと以下質問をしたいと思います。

 私は以前、平成20年第三回定例会において、パンダの件で質問をいたしました。
 パンダも、先に述べたIUCN=国際自然保護連合のレッドリストに掲載され、絶滅の危機にあるとされ、その保護育成が必要であるとされています。
 そこで今回、再度、ジャイアントパンダ導入についてお尋ねいたします。

 昭和47年10月に日中国交正常化を記念してジャイアントパンダ二頭が上野動物園に来園しました。牡の名前は 「カンカン」、牝の名前は 「ランラン」 と名付けられ、多くの日本国民に愛されました。
 来園から二年目の昭和49年の年間入園者数は七百六十四万人を記録し、東京都内はもとより、日本国中がパンダ来園に沸き、地元商店街は活気に溢れ、パンダ来園の波及効果は高度経済成長の一翼を担ったものでありました。
 以来パンダは上野のシンボルとなり、上野とパンダは切り離して考えることができない程となりました。また、WWF=世界自然保護基金のシンボルマークとして活用されてもいます。

 平成20年4月30日に 「リンリン」が死亡してから実に2年の間、上野動物園のパンダ舎にはジャイアントパンダが不在となり、パンダ舎にはレッサーバンダが居住していました。
そこを訪れる子供達は 「パンダはどこにいるの」「何でレッサーバンダなの」、「本当のパンダに会いたい」という声が多く聞かれました。
 そこで地元台東区では、パンダ再来園を切望して、署名活動や陳情書、小学生はパンダの絵や寄せ書きをして都知事にパンダを呼んで欲しいと訴えました。また、23区区議会議長会でも都に対してパンダ導入の要望を致すことがありました。

 こうした多くの方々からの熱望を受け、都知事も交渉の端についたことは、さすが都民目線で政治を行っているものと高く評価をするものであります。
 そこで現在中国側との交渉の中で、どのような協議を行っているのかをお伺いいたします。


○建設局長答弁
 中国側との協議についてであるが、希少な野生動物の象徴であるパンダを導入し、繁殖への取組や展示を行うことは、種の保存や、来園者の自然保護への理解を深める上で重要である。

 本年2月に、パンダ繁殖研究プロジェクトの実施期間や中国に提供するパンダ保護資金の額など、中国側と基本合意した。
 これを受け、現在、協定書の調印に向け、パンダ繁殖研究プロジェクトの進め方や役割分担について、最終的な調整を行っている。


○中村明彦
 パンダは現在、国際自然保護連合が発表した、「絶滅のおそれのある生物リスト(レッドリスト)」に掲載されていることは先にも述べましたように、現在二千頭に満たない生息数というのが現状であり、保護育成が必要であるとされています。           

 そのためには、パンダ保全の国際的な支援を行うため、中国ジャイアントパンダ繁殖技術委員会年会が毎年開催され、生息地の保全と繁殖を目的として、アメリカ、スペイン、オ−ストリア、タイ、オーストラリア、日本の六ケ国で十ヶ所の動物園がパンダを飼育し、中国に対して保獲資金を提供しているのであります。

 そこで中国側に提供するパンダ保護資金が具体的にどのように使われることになるのか、お伺いいたします。


○建設局長答弁
 パンダ保養資金についてであるが、都が中国側に提供するこの資金は、パンダの生息地を保全するためのパンダ保護事業のサポート及び、中国パンダ保護研究センターにおける、パンダの健康管理や繁殖に関する科学研究業務などに使われる。


○中村明彦
 本年二月には、都知事は記者会見でこう述べられております。「非常に強い要望があちこちからあった。子供達の人気が集中するようですから、それを備えることもやぶさかでない」として、パンダを受け入れようと発表されてから、都は積極的に中国側の中国野生動物保護協会と交渉を進めて参lりました。

 しかし、正式調印をしなければ確実にパンダが上野動物園に来園すると決まったわけではありません。上野動物園がある地元や、小学生たちも手放しで安心できるものではありません。

 もちろん、相手が動物なのでオス、メスの相性を見極めなければなりませんし、健康状態やワシントン条約に定められた国際手続きの進め方など諸問題があることは十分承知しておりますが、早急に調印を行って子供達の願いを実現させ、安心させて頂きたいと願うものであります。
 そこで今後、どのような準備をして、いつごろ導入されるのかをおたずねいたします。


○建設局長答弁
 今後の準備と導入の時期についてであるが、協定書締結後、パンダ受入れ準備として、日中双方が、ワシントン条約に基づく輸出入の許可申請を行い、輸送に関する準備や検疫等を行う。
 並行して、パンダ舎の老朽化した設備の更新や改修を行う。
 このため、パンダの導入は、平成23年早期を予定している。


○中村明彦
 また、パンダが導入された時には、レッドリストに掲載されている希少動物の保全の大切さを訴える絶好の機会となります。

 温暖化による地球環境の破壊、CO2削減の推進など、動物を通して子供達から大人達までが、また外国からの観光客にも、地球を守り、大切にすることの意義を伝え、環境保全の啓発につなげていければと考えます。

 その役割は日本一の入園者数を有し、世界的にも優秀な飼育員を有する上野動物園だからできることであり、積極的に取り組んでもらいたいと考えております。

 そこで上野動物園では、稀少な野生動物の保養育成、地球環境の保全について、パンダを通じてどのような啓発活動を行っていくのかをお伺い致します。


○建設局長答弁
 希少な野生動物の保護等に関する啓発活動についあるが、これまでも、都立動物園では、国内外の動物園や研究機関と連携し、希少な野生動物の保護増殖や生息地保全の支援に努めてきた。

 これらの取組を分かりやすく伝えるため、恩賜上野動物園をはじめとする都立動物園では、ゴリラやトラの生息地の危機的な状況を解説するパネルや、オランウータンの保全活動に関するシンポジウム、小学生を対象にツシマヤマネコの生態を学ぶ講座など希少野生動物の保護に関する啓発活動を実施している。

 パンダ導入に当たっても同様に、パネルや映像などを活用し、来園者に希少野生動物の保護の必要性と生物多様性保全の重要性を伝えていく。


○中村明彦
 次に小笠原諸島の世界自然遺産登録申請について質問を致します。 

 小笠原諸島については、平成19年1月、世界に例を見ない地形地質を有し、多くの固有種、希少種が成育する特異な島嶼生態系を形成していることから、政府ユネスコの世界遺産委員会へ自然遺産の暫定リストを提出しました。そして、本年1月26日には世界遺産委員会へ推薦書を本提出致しました。

 本推薦書を提出するに当たっては平成18年11月に小笠原諸島世界遺産候補地地域連絡会議、同じく科学委員会を設置し会議を重ねてまいりました。科学委員会は大学教授を中心とした学識経験者や行政機関で構成され、固有種の保護管理に関して、科学的な観点から現在まで十二回の会議を積み重ねてきました。又、地域連絡会議においては、地元小笠原諸島の商工会、観光協会やNPO団体を中心として、管理計画実行のための検討や、外来種対策の検討を現在まで十二回の会議を開催されてきたと伺っております。推薦書の提出に至ることが出来たのは、その成果の賜物ではないかと考えるところであります。

 現在、日本国内における自然遺産登録は、屋久島、白神山地、知床の三か所であり、文化遺産は琉球王国のグスクをはじめとして十一か所が登録されていますが、小笠原諸島は東京都では初の世界自然遺産登録申請となります。小笠原諸島は、「オナガミズナギドリ」 や 「カツオドリ」 などの海鳥の繁殖地にもなっており、国の天然記念物の 「シマアカネ」や「オガサワラシジミ」、「オガサワラトンボ」、「オガサワラゼミ」などが生息しています。これら島、固有の動植物を守っていかなければならないと考えます。
 世界遺産に登録された場合、観光希望者が今より多くなる事は歴然としています。そのこと自体は拒むものではありませんが、観光客によって自然を破壊される恐れや、外来種を持ち込まれる恐れが生じてきます。そうならないための対策をどのように講じていくのかをお聞かせ下さい。


○環境局長答弁
 小笠原の観光客の増加への対応についてであるが、小笠原の貴重な自然環境の保全・管理を適正かつ円滑に進めるためには、世界遺産の推薦に当たって策定した管理計画を着実に実行していくことが必要である。

 具体的には、観光客の増加による自然の破壊を防ぐため、利用人数や利用ルートの制限を定めた東京都版エコツーリズムを推進していく。
また、観光客による希少動植物の捕獲や外来種の侵入防止するため、東京都レンジャーによる巡回や指導を進めていく。              

 今後も、関係者と連携しながら、都独自の先進的な取組を推進し、観光とも調和を図りながら、小笠原の自然を守っていく。


○中村明彦
 私は先般、環境建設委員会で5月に白神山地のブナ林の視察をして参りました。平成5年に、日本初の世界自然遺産として登録された地域であります。そこでの説明員の方、二名に案内をされて行きましたが、青森県の職員を退職された後ボランティアとして自然保護を生き甲斐としている方であり、一つ一つの動植物に対する強い情熱を感じ、深く感銘を受けたものでありました。

 東京都では、平成16年から自然公園を中心とした地域における自然の保護と適正な利用、管理を行う目的で都独自のレンジャー制度を創設しました。正式名称は東京都自然保護員、いわゆる 「都レンジャー」 として現在18名が多摩地域と小笠原地域で活動をしています。「都レンジャー」 は9か所の地域で活動をしていますが、秩父多摩甲斐国立公園、明治の森高尾国定公園、高尾陣馬自然公園を始めとした多摩地域の国立公園、国定公園、都立自然公園に12名が配置され、そして小笠原国立公園に6名が配置されています。

 小笠原諸島において 「都レンジヤー」 の活動の一端を紹介させて頂きますと、父島と母島に3名ずつ計6名が配置され、観光客による固有種の盗掘等の不法行為の防止、過剰利用やマナー違反の注意、遊歩道や自然公園施設を、安全に利用できるようにするための指導標識や案内板の補修、点検、及び破損か所や危険か所の応急補修などを行っています。

 そして、近接する南島を始めとして数多くの島の外来種の駆除や、固有動植物の生息状況の調査、外来種の生息状況の調査を行い、定期船の入出港の際にも立ち合い、小笠原からの違法な持ち出しや、外来種の持ち込み警戒など、それは多岐に渡っての活動であります。

 世界遺産登録を目指す小笠原諸島においては、喫緊の課題である外来種対策や、観光客の増加による自然への影響を最小限に抑えるため、小笠原諸島における 「都レンジャー」の役割がますます重要になると考えますが所見をお伺いいたします。


○環境局長答弁
小笠上原における東京都レンジャーについてであるが、世界自然遺産の価値である独自の生態系や固有種を守る上で、都レンジャーの役割は、今後ますます重要となっていく。
そのため、外来種の侵入拡散防止に向け、都レンジャーによる定期船の発着時の荷物確認や、マットでの靴底洗浄の指導を徹底していくとともに、観光客の増加による自然の破壊や盗掘を防止するため、観光事業者への指導、観光客への利用マナーの普及啓発を強化していく。また、都レンジャーによる自然環境の継続的な観測・監視を強化し、その状況の変化に対応した保全対策を的確に講じていく。
今後も、都レンジャーの専門能力や機動力を生かして世界自然遺産にふさわしい小笠原の自然を守っていく。


○中村明彦
 また、都では 「都レンジャー」を支援するボランティアとして、サポートレンジャーがおり、現在多摩地域において120名あまりの方々が活動していると聞いております。先ほど述べました、白神山地は範囲が広いとはいえ、陸続きの一つの地域であけます。

 しかし小笠原諸島は、父島、母島などの大小多数の島からなり、自然を保護、管理して行くには6名の 「都レンジャー」では、あまりにも面積広く、行き届かなくなる面があるのではないでしょうか。そこで 「都レンジャー」の増員が必要であると考えますのと同時に小笠原諸島にもサポートレンジャーの導入を図り、世界遺産に登録申請している小笠原諸島の自然を守っていく体制を構築していくべきと強く要望して私の質問を終わりにさせて頂きます。