平成20年
第三回 定例本会議  一般質問

平成20年9月26日(金)


○中村明彦 
 まず最初に、環境対策についてお尋ね致します。
地球の温暖化は、年ごとに上昇している傾向となっております。
都知事は以前、フィージー諸島の北にあるツバル国を訪問され、地球温暖化による海水面の上昇で、島が水没の危機にさらされている現状を視察して来たと伺っております。
 私達都議会民主党も、昨年10月に、私と酒井議員、石毛議員、原田議員の4名で、海水面が上昇する原因とも言える、氷河が融解し始めているグリーンランドを訪問視察して参りました。氷河の現状を、現地のカルゲルルススアークの市の職員の方々、地元先住民族のイヌイットの方々から話を伺って参りました。
 最近の気候の変化、気温の上昇により、以前は雪しか降らなかった土地に雨が降るようになった。この事により動物の生態系、生息地の変化が生じ、その土地に生息している「ジャコウウシ」や「ホッキョクグマ」が絶滅の危機にさらされていると話をされていました。
何故、この様な状況になったのかと問うと、CO2の増加により、地球全体の気温が上昇しているからで、カルゲルルススアークの方は、今まで考えられなかった摂氏5度以上の気温が観測される様になったと。 この様な現象の原因として予想される事は、無差別な森林伐採、温室効果ガスの増加などによる気温の上昇を危惧しており、先進国の人達は氷河の後退という現実を直視し、地球温暖化にもっと関心と危機感を持って欲しいと訴えておりました。
 そこで知事は、この様な現状をどうとらえているのか、そして、今後どの様に解決して行くのか、ご所見をお伺い致します。

○都知事答弁 
 地球温暖化対策についてでありますが、地球温暖化については、多くの専門家が警鐘を鳴らしているように、今思い切った対策を講じなければ、あと五、六年のうちにポイント・オブ・ノーリターンに達すると言われるなど、憂慮すべき事態となっております。
例えば、NASAのハンセン教授が指摘しているように、現に北極海の氷は解けつつありまして、このままだと、あと18年で消滅するといった状況があちこちで起こっております。
 温暖化がもたらす破局的事態を回避するためには、CO2の徹底した削減を速やかに実行することが必要であります。都は、都民や企業などあらゆる主体に省エネ・節電の具体的行動を働きかけるため、既に導入を決めた削減義務化を着実に具体化していくとともに、今回新たに都独自の太陽エネルギー普及拡大策を講じるなど、低炭素型都市の実現に向けた施策を着実に展開してまいります。

○中村明彦 
 私は、まず第一として、CO2の削減を早急に実施しなければならないと考えております。
京都議定書では、2012年までに1990年対比で、6%の削減を義務付けました。
洞爺湖サミットでは、2050年までに温室効果ガスの排出量を、50%以上削減を呼びかけました。この指針ではあまりにも遅く、また、基準が甘いと言わざるをえません。
 地球の平均気温は過去100年間で0.74度上昇しています。しかし、最近50年間では約2倍のスピードで気温が上昇しているのであります。
 現在の環境のままですと、今世紀末では平均気温が6.4度上昇すると「IPCC」の第四次評価報告書で述べられています。
 都では、2020年までに温暖化ガス排出量を25%削減を目差していますが、目標が12年後では遅いのではないでしょうか。少なくとも5年以内に目標値の設定を修正すべきではないでしょうか。
 また、家庭から出る温室効果ガスが、1990年に比べ30%以上も増加していると聞いております。「十年後の東京」実施プログラムの中にも、CO2削減の家庭での取り組みが書かれており、太陽光発電の普及、白熱灯の一掃作戦で、蛍光灯への変更などが掲げられていますが、現状では一般家庭での意識が高いとは考えられません。
 そこで、家庭での温室効果ガス削減に対して、その取り組み、広報について、改めて決意とお考えをおたずね致します。

○環境局長答弁 
 家庭でのCO2削減に関するご質問にお答えします。
 都は、昨年夏から、都内の小売業界と連携し、都民が電球形蛍光灯をより身近に購入できるよう、「白熱球一掃作戦」を展開してきました。その結果、チェーンストア業界での販売個数が二割から三割増えるなどの成果も上がってきております。
 また、今回、太陽エネルギーの飛躍的な利用拡大に向け、国にさきがけて家庭用太陽光発電等への補助制度の導入を明らかにしました。
 家庭のCO2削減を進めるため、今後、これら低CO2型のエネルギー機器の普及をさらに進めるとともに、ライフスタイルの転換を促す省エネキャンペーンの実施などにも取り組んでまいります。


○中村明彦 
 こうした地球の温暖化が進んで行く中で、自然環境の破壊から、数々の動物が絶滅の危機に晒されているのであります。 国際自然保護連合(IUCN)の調査によると、現在地球上の動物の内、霊長類では634種の約半数近くの303種が絶滅の危機にあり、その中でも69種については、絶滅の恐れが極めて高いと報告されています。 また、地球上の生物を見てみると、「IUCN」が調査した約4万種類の中で、2006年の段階で約1万6千種以上の生存が脅かされているのであります。「ホッキョクグマ」や「パンダ」、「スマトラトラ」なども、地球温暖化や開発の影響を受けているのであります。
 こうした現状からも、身近な動物園において、絶滅の恐れのある動物を飼育、展示をし、生息地の現状などについて解説することで、希少動物の保護について「今、人々が何を考え、何をすべきなのか」を考えてもらい、これから人類が自然との共生を目差して行く上で、将来を担う子供達に、地球を守る理念が芽生える様にして行く事が重要な事であると思います。
 一方、絶滅の恐れのある動物の保護については、その動物が生息している国の取り組みだけでは限界があり、各国が連携して取り組むことが絶滅危惧種動物を保全する上で重要なことと考えます。
 その中で、パンダの保護については、中国国内の動物園や、保護繁殖センターなどの他、アメリカ、ドイツ、スペイン、オーストリア、タイ、日本の既に貸与を受けている6カ国、10の動物園が中心になって「パンダ保護国際会議」が開催され、繁殖、生息地の保全、人的交流、人材育成などの国際的に協力する枠組が作られ、成果を上げているところであります。
 パンダは、WWF「世界自然保護基金」のシンボルマークとしても活用されており、我が国では、年間入場者数が最も多い上野動物園が希少動物の象徴であるパンダを飼育展示することによって、上野動物園が動物園の役割である種の保存機能を果たし、希少動物の保護をアピールする効果が高く、大変意義深いところでもあります。
 そこで、我が国を代表する動物園である上野動物園がパンダを受け入れる方向で検討すべきと考えるが、ご所見をお伺い致します。

○建設局長答弁 
 恩賜上野動物園のパンダ受入れについてであますが、動物園の役割として、絶滅のおそれのある野生動物の繁殖に取り組むことや、展示を通して環境教育を行うことは、種の保存や、来園者の自然保護への理解を深める上で重要であります。
 このため、上野動物園では、希少動物の飼育に積極的に取り組み、成果をあげてきましたた。特に、パンダについては、人工哺育のための専用ミルクを開発し、中国に提供するなど、その繁殖に貢献してきました。
 パンダ保護の国際的な枠組みの中では、パンダの保護繁殖への支援が求められることになっておりますが、現在のところ、それを踏まえた共同研究などの内容は、中国から提示されておりません。その内容が明らかになった段階で、十分吟味し、適切に対応してまいります。


○中村明彦
 次に、地球温暖化防止の観点から、都市の環境対策についておたずねします。
東京都は、以前には水と緑と風が豊かな都市でありました。故渋沢栄一初代東京商工会議所会頭が、東京を水の都ベニスと同じ様に、水の都東京としての都市づくりをするべきと提唱しました。東京の河川の代表である隅田川を大いに活用し、日本橋川や神田川などの中小河川を、都民が憩える水辺空間を創出すべきと考えます。
 そうした中、「十年後の東京」実行プログラムでも、隅田川の親水テラスの整備計画も出来、一部では着工が進んでいるところではありますが、お年寄りから幼児まで、そして障害を持たれた方にも、安心して憩える空間にして行かなければなりません。
 そこで、親水テラスに行く方法として、階段を利用させるのではなく、全てスロープにし、親水テラスには、トンボや蝶々を初めとする昆虫やカニなどの小生物が生息できるビオトープを各所に創出し、自然環境も親しめる様にテラス全域を構築すべきと考えますが、ご所見をお伺い致します。

○建設局長答弁 
 隅田川のテラス整備についてでありますが、河川の整備においては、治水機能を確保しつつ、地域特性を踏まえ、自然環境に配慮した水辺空間を創出していくことが重要であります。 隅田川では、これまでも、水辺の散策を楽しめるテラスや緑豊かなスーパー堤防の整備を進めてきており、多くの都民に親しまれております。
 これらの整備に当たっては、緑の空間を生み出すため植栽を行っておりますが、一部では、アシが茂り、水生生物が生息できるピオトープを創出してきました。
 また、テラスには、水辺に近づける階段を設置しておりますが、構造やスペースなどの状況に応じ、可能な箇所については、車いすの利用者などが使いやすいスロープを設置しております。
 今後とも、構造的な制約、地域の特色、地元要望などを勘案し、多くの人々が憩い、安らぎを感じる隅田川の整備に努めてまいります。


○中村明彦 
 また、都市のヒートアイランドの解消として、都の計画しているグリーンロードネットワークの達成時期を、10年後ではなく、スピードアップをして、温暖化を防止する効果を出すべきであります。 私の地元台東区でも、地域の方々が率先して、桜の木を都道に増やして欲しいとの要望があり、都と協議の上、植樹が行なわれたのであります。
 この様に地域の協力があれば、目標期間の短縮は可能であると思われます。ぜひとも積極的に実現に向けて頂きたいのであります。
 また、実行プログラムで取り組んでいる都有施設の緑化については、新規建築物のみならず、既存の建築物についても、より積極的に緑化をして行かなければなりません。台東区役所は、建築年数が40年以上を経た建物ではありますが、壁面の一部を緑化したところ、区民には大好評で、緑化がヒートアイランド防止に役立つとの意識の啓発につながったのであります。 この様な事例を踏まえ、都市緑化として、都の建築物の壁面緑化を、全施設を対象として実施すべきであります。
 ヒートアイランド対策では「十年後の東京」の中で、海からの風を都市の内部に導く「風の道」を作り出す事が提唱されています。 今後の都市づくりにおいては、緑化は勿論のこと、建物の高さを抑制した中低層の街区計画や、建物間を充分にあけ、オープンスペースを造る高層建築の指導など、街づくりの早い段階から、環境対策を位置づけ「風の道」を確保することが重要と考えます。
 そこで、今後の都市づくりにおける「風の道」の取り組みについてご所見をお伺い致します。

○都市整備局長答弁 
 都市づくりにおける「風の道」 の取組についてでありますが、都はこれまでも、都心部での大規模な開発における積極的な緑化やオープンスペースの確保、保水性舗装の導入などにより、ヒートアイランド対策に取り組んでまいりました。
 また、品川駅・田町駅周辺地域などでは、開発計画を適切に誘導し、建築物の配置を工夫などにより、運河沿いという地域特性も生かして、風の道を確保することとしています。
 今後も「十年後の東京」に示したとおり、広域的・骨格的な緑を形成し、「風の道」を生み出すなど、環境に配慮した都市づくりを進めてまいります。


○中村明彦 
 次に、中小企業支援対策についておたずねします。
日本経済の先行きは非常に不透明な状況にあります。都内の中小企業は、原油高に起因して、原材料費の高騰に、あるいはアメリカのサブプライムローン問題に端を発しての金融機関の破綻の影響による国内金融機関の貸し渋りなど、厳しい経営状況に直面をしているのであります。 東京都では、現在でも様々な中小企業支援策を行なってはおりますが、こうした厳しい経営状況の中で、都内の中小企業を守り、都民の暮らしを守って行くためには、今後より一層こうした支援策を充実させる必要があるのではないでしょうか。
 また、こうした中で、中小企業にとって、法人事業税、法人都民税の法人ニ税を初めとして、固定資産税、都市計画税、事業所税など地方税の税負担は大きな問題であり、東京商工会議所や都内の中小企業の団体などからは、税負担の軽減の要望が出されているのであります。
 地方法人課税は都の大事な財源であることは十分に承知をしております。一定の配慮もされてはおりますが、現在の景気後退の時期には、中小企業支援策として地方税の軽減も必要ではないかと考えるのであります。
 特に事業所税につきましては、東京商工会議所から都に対しても要望も出されており、地方税法の改正を含めて、都が検討される事を強く要望するものであります。
 最近、私のところに地元の事業主の方が来られました。その方は外国と新規の取引きの話しが持ち上がった。しかし、保証金を積まなければ契約が結べない。その企業は過去の経営状態が悪く、銀行借入れもしているので、地域の金融機関では融資を受ける事が出来ず、制度融資を利用したらと言われたとの事でした。
 本来なら、新銀行東京がこうした企業に資金提給を行い、中小企業支援という設立当初の理念を果たすべきであったのですが、再建中の銀行とあっては、難しいと言わざるを得ません。新銀行東京の設立理念が果たせないのならば、この銀行の使命は終わったと判断するべきではないでしょうか。都は再建は必ず出来ると言っておりますが、提出された計画書を見ても、信頼に足りるとは思われないのであります。もうこれ以上、都民に負担をかける事なく、早く清算すべきと改めて主張するものであります。
 一方、中小企業の厳しい状況は、まさに待ったなしであります。目前の中小企業を救う重要な役割は、都の重要な金融政策である東京都制度融資にかかっているのではないでしょうか。
 今こそ都内中小企業の資金繰りを支援するため、制度融資の枠の拡大や、保証審査のさらなる弾力化を図るべきと考えますが、ご所見をお伺い致します。

○産業労働局長答弁 
 中小企業支援策の充実についてでありますが、都は、これまでも、技術、経営、資金供給など、多面にわたり中小企業を支援してまいりましたが、世界的な金融市場の混乱や、原油・原材料価格の高騰などもあって、都内中小企業を取り巻く環境は極めて厳しい状況となっております。
 こうした認識に基づきまして、都は、納品単価の切り下げ要求などに苦しむ中小企業を支援するため、下請取引の紛争を裁判外で解決する「下請センター東京」を設置いたしました。
 また、現下の厳しい経営環境においても、中小企業が積極的に設備投資に踏み出せるよう、今定例会に「中小企業設備リース事業」に係る補正予算案を提出したところであります。

 次に、中小企業の資金繰りに係る支援についてですが、都におきましては、都内中小企業の多様な資金調達を実現するため、新銀行東京の設立や制度融資、CLOなど様々な金融支援策を講じてきております。
 お尋ねの制度融資の拡充についてでありますが、原油・原材料価格の高騰などに苦しむ中小企業を中心に、セーフティネット保証の利用が急増していおります。このため、経営支援融資の目標額を三百億円拡大するとともに、小規模企業者に対する信用保証料の補助率を大幅に引き上げ、資金調達の円滑化と負担軽減を実現すべく、今回の補正予算案に必要な経費を計上したところでございます。
また、信用保証協会や金融機関に対して、制度融資の積極的な利用を要請したところであり、今後とも中小企業の資金繰りの円滑化に努めてまいります。

○中村明彦
以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。