平成16年
第4回 定例会議 一般質問

-平成16年12月9日(木)-

中村明彦(民主・台東区)
 先日天皇家の長女紀宮さまのご婚約が内定されました。お相手の方は、秋篠宮様の大学時代の同級生で、都庁職員の黒田慶樹さんということで、驚きとともに、国民として最大のお喜びを申し上げる次第でございます。ご婚約発表の時期につきましては、台風の被害にあわれた方や新潟県中越地震で被害にあわれた方々が苦しんでいる中に、慶事を発表するには忍びないと天皇、皇后両陛下の国民を想う温かいお気持ちの中で延期され、十二月の十八日に婚約内定の発表をされることとしました。
 このことは皇室が常に国民のことを想い、国民と共にあられるということを強く印象づけられた次第です。紀宮さまも皇室のこの温かいお気持ちをいつまでもお持ちになられ、温かいご家庭を作られますことを、心よりご祈念申し上げさせていただきます。
 さて、それでは質問に移らせていただきます。
 まず、観光産業の振興についてです。
 石原知事は、平成十三年十一月に、観光を産業としてとらえて、国に先んじて「東京都観光産業振興プラン」を策定しました。以来三年が過ぎました。振興プランでは、平成十四年から五年間で、観光客を倍増する計画でしたが、実際には、外国人観光客が計画通り増加していないように思われます。
 今後、さらなるシティーセールスの展開と受け入れ体制の充実がのぞまれますが、なかでも、私は、新たな観光資源の創出に向けて、隅田川の水辺空間の活用についてお尋ねしたいと思います。
 隅田川は、江戸時代、浅草川と呼ばれており、浅草寺本堂の観音様が出現した駒形あたりから宮戸川と呼ばれ、ここから下流が大川となり、両国橋から霊岸島あたりまでの川の西側を大川端といっておりまして江戸時代の人々のレクリエーションのエリアでありました。土手の散策、川面の涼風を楽しむ船遊びや川開きとして有名な花火の打ち上げも庶民の楽しみの場所でありました。また一方では、舟運の水路としても多く利用され荒川と利根川との往来により、物流の一大ネットワークが構成されておりました。江戸の町が栄えたのも、こうした隅田川をはじめとする水路の活用、水辺ラインの利用があったからだと言えるのではないでしょうか。
 現在でも、浅草は隅田川沿いに位置する都内有数の観光地の一つであります。その隅田川では、親水テラスの整備など、都民が水辺に親しむことができる取り組みが徐々ではありますが進んでいます。しかし、隅田川に浮かぶ船上から見上げる街の光景は、川に背を向けて林立するビル群、人を拒絶するかのごとくのカミソリ堤防など、景観という点では著しく魅力を欠くものになっております。また、旅行者に対する案内表示の不足など、陸上から水辺へのアクセスという点での配慮が必ずしも十分でないことから、水辺を訪れる人の流れも余り目にすることができない状況です。
 一方、海外の例をみると、パリのセーヌ川では、バトームッシュという食事も楽しめる観光船がノートルダム寺院をはじめとする歴史的建造物の近くを遊覧することで、多くの観光客を集めており、中国の上海では、黄浦江沿いのバンドと呼ばれる地区において、水と緑と建物が見事にマッチして多くの観光客や地元の人たちに楽しまれているのであります。数え上げればまだまだきりがない程、数多くの例が存在し、都市づくりの中心にも位置づけられ、人々から親しまれる存在であるばかりでなく、河川が都市そのもののイメージを高め、海外から多くの旅行者を誘致する上での重要な観光資源となっております。
 東京都においても、隅田川という歴史的にも都民から親しまれてきた貴重な財産を観光資源として積極的に活用していくことで、浅草だけにとどまらず「臨海副都心観光まちづくり」との連携、また、羽田空港の拡張に伴い将来的に羽田空港の客が水路を利用して観光をしながら、都心部へ移動させる方法も考え、国内外から多くの旅行者を誘致することにつながっていくものと考えます。
 この度、東京都では十七年度重点事業として、「東京の水辺空間の魅力向上に関する全体構想」を策定することになっておりますが、隅田川などの水辺空間を活用した、魅力ある観光資源の創造に向けて、石原知事のご所見を伺います。
都知事答弁
 東京の水辺空間を活用した、魅力ある観光資源の創造についてであるが、
一、 東京には、かつて運河や水路が発達し、水運だけでなく、遊びや憩いの場としても多くの賑わいがあった。
二、 現在は、水辺が持つ本来の魅力が活かされていない。
(例) ・川を背にして連なるピル群
・舟艇が停泊できない護岸 など
三、 来年度、東京の水辺空間を観光資源として再生するための全体構想を策定。
四、 魅力ある舟運(しゅううん)ルートの開発やテラスの活用などにより、賑わいを創出し、海外からも多くの旅行者を引き付ける東京の水辺空間を実現する。

中村明彦

 観光振興への取り組みをさらに発展させ、地域をますます活性化させていくには、周辺地域を含めた、それぞれの観光スポットを有機的に結合し、ルートを形成するなど、地域全体の魅力を高めていくことが大切だと思うのであります。
 特に、台東区には、隅田川沿いの浅草と並ぶ観光の拠点である上野地区がありますが、上野地区は、文化施設が集積しているだけでなく、その周囲には、特色ある商店街や、寺院が点在する谷中など、多くの観光資源を抱える地域が隣接しております。しかし、これらの施設を訪れる旅行者が、こうした他の地域にも足を延ばすという状況には必ずしもなっていません。
 旅行者の回遊性を高め、賑わいを創出するには、上野を訪れた旅行者に対し、周囲にも優れた観光スポットが数多く存在することを伝えるとともに、安心してまち歩きを楽しむことができるしくみが重要と考えますが、見解を伺います。
産業労働局長答弁
 上野地区における回遊性の向上についてであるが、上野公園では、本年十一月より、台東区と地域のボランティアとが連携し、英語による観光案内を開始するなど、新たな取組みが進められている。
 都は、こうした取組に対し、ボランティアの待機場所の調整等を行ったほか、本年度末を目途に、谷中・根津・千駄木方面への観光案内標識を設置するなど、地域の回遊性の向上に向けた支援を行っている。
 今後とも、旅行者が、周辺地域も含め、まち歩きを楽しめるよう、適切な観光情報の提供に加え住民や地元商店街、自治体等が連携し、地域の魅力を旅行者に伝えていくための取組を進めていく。

中村明彦
 また、十七年度重点事業では、ICタグの活用可能性の検討として、上野などの一定のエリア内で、店舗、施設の観光情報を都民や来訪者に提供することを掲げています。
 今回の実験では、ICタグを歩道や案内板、あるいは店舗や施設などに取り付けることにより、上野などを訪れる人は、いちいちサイトを検索しなくとも、携帯電話や専用端末などで、現在の位置情報やお店や施設の情報、あるいはイベントの情報などを入手することができるということです。
 しかし、私は、今回の実験の目的が、観光情報の提供であるのであれば、観光振興で上野地域が抱えている回遊性という問題にも、適切に対応することができるよう、周辺への本格的な展開を視野に入れて取り組んでいくべきと考えます。
 ICタグを活用した上野地区での取り組みと地域の活性化について、見解を伺います。
都市整備局長答弁
 ICタグを活用した実験についてであるが、この取組は、外国人をはじめとして、まちを訪れた人が、観光情報などを手軽に得られる仕組みを実用化することにより、観光振興や地域の活性化などを図ることを目指している。
 こうした新しい仕組みの実現には、実地における技術の検証が不可欠であり、都内の主要な観光地において、都が一定エリア内での実験に取り組むものである。
 お尋ねの上野については、施設情報や施設へのルート案内などを想定しており、将来の観光まちづくりへの展開も視野に入れつつ、今後、具体的な実施内容を検討していく。

中村明彦
 現在、全国の自治体でも、観光を地域活性化の手段としてとらえなおして外国人旅行者を受け入れるさまざまな活動を開始しており、東京都の先駆的な取り組みがこうした動きにも波及しています。外国人旅行者を誘致するには、地域の魅力を高めることや、旅行者を温かく迎える仕組みづくりが一番重要となります。そのため、都内の様々な地域において、「住む人が誇りをもち、旅行者が何度でも訪れたくなる」まちづくりを目指す活動が随所に現れつつあります。
 こうした動きをつくるきっかけの一つが、東京都も参加する形で発足した「上野地区観光まちづくり推進会議」が進める観光まちづくりモデル事業ではなかったかと考えます。
 本年三月に「東京都観光まちづくり基本指針」が発表され、上野地区と臨海副都心地区をモデル地区として検討会が設置されました。上野地区では、東京国立博物館をはじめとするライトアップ、上野公園内でのオープンカフェ、十一月には、ミニトレインの試運転を実施して多くの観光客に喜ばれております。それも地域の観光連盟、商店街が率先して誘客に取り組んでおり、東京都と文化施設と地域とが連携した要因が最大の成果であると考えます。また、本年七月には、浅草においても「浅草地区観光まちづくり推進協議会」が設立されるなど、他の地域にも広がりを見せています。
 上野での観光まちづくりが成功しているのは、地元の観光連盟や商店街、文化施設など地域が連携した取組みを行い得たことが最大の要因ではありますが、行政の側においても、観光施策を所管する産業労働局に加え、公園・道路管理者である建設局や、文化施設を所管する生活文化局、さらには地元台東区などが緊密に連携をとりながら事業を進めてきたことも重要な要素であると考えます。
 今後、都内のさまざまな地域で観光まちづくりが推進されていくにあたって、こうした各局間の連携をさらに深め、総合的な取り組みを推進していくことが重要であると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
産業労働局長答弁
 各局連携による観光まちづくりの推進についてであるが、上野地区では、公園の利用や施設の提供などにおいて複数の関係局が連携・協力し、地域の主体的な観光まちづくりへの取組を支援している。
 観光は、都市としての総合力が問われる課題であり、各局が実施する観光関連施策の効果的な連携が不可欠である。
 このため、庁内に「観光施策連携推進会議」を設置したところであり、各局連携の下、施設整備や規制緩和などハード・ソフトの両面から観光施策を推進するとともに、地域の観光まちづくりを支援していく。

中村明彦
 次に、都市再生についてお尋ねします。
 わが国の国際競争力を高めていくためには、首都東京の活力を再生させていくことが不可欠であります。
 とりわけ東京駅の至近に位置する大手町地区は、金融、情報通信、新聞メディアなどの本社が数多く立地する日本経済の中枢を担うエリアであり、この地区をグローバルビジネスの戦略拠点として再生していくことが重要です。この地区の機能更新については、平成十五年一月に国の都市再生プロジェクトにも位置づけられているところです。
 この都市再生プロジェクトは民間の力を発揮させながら進めるものではありますが、都としても様々な側面からサポートしていただき、我が国の国際競争力の向上に向けて取り組んでいただきたいと思います。そこで、いくつかお尋ねいたします。
 東京都などでは、このプロジェクトを、合同庁舎跡地を活用して連続的な建て替えを進める連鎖型都市再生プロジェクトとして位置づけておりますが、まず、「連鎖型」の意義と当面の進め方について伺います。
都市整備局長答弁
 大手町地区の連鎖型都市再生についてであるが、
 大手町地区は、日本経済の中枢機能の集積地であるが建物の老朽化が進み、IT化への対応にも遅れが見られる。
 加えて、この地区は二十四時間稼動型業種が多く、業務を中断することなく、建物の機能更新を進めていくことが、国際競争力の強化の観点から不可欠である。
 このため、国の合同庁舎跡地を種地として、順次、建替えを進めていく新しいまちづくりの
プロジェクトが、この連鎖型都市再生である。
 今後、都市再生機構による跡地の取得、土地区画整理事業や街路の都市計画の手続きなど、事業化に向けた取組を進めていく。

中村明彦
 ところで先日の「赤旗」新聞に、この大手町のプロジェクトに関する記事が掲載されました。
 その中で、この連鎖型プロジェクトの契機となる合同庁舎跡地について、「随意契約でより安く跡地を購入するため、都市再生機構が土地区画整理事業を行う」というくだりがありました。
 あたかも不適切な方法で跡地を都市再生機構に払い下げるような論調でありますが、本当はどうなのか。合同庁舎跡地の払下げ方法について、伺います。
都市整備局長答弁
 合同庁舎跡地の売却方法についてであるが、財務省が、「国有財産関東地方審議会」の審議を経たうえで、大手町地区の都市再生に必要な用地として、随意契約により、都市再生機構へ売却するものである。
 また、売却価格は、今後、財務省が鑑定価格等をもとに、適正な価格を決定する。
 都市再生機構は、本地区の連鎖型都市再生を支えるため、土地区画整理事業などを実施し、また、長期にわたり種地の保有を行っていくものである。
 したがって、これら一連の仕組みは、都市再生を進める上で、いずれも適切な方法であると考える。

中村明彦
 このような事業を進めていく上では、都と地元区の連携が重要です。しかし、千代田区は一時期、検討に参加していなかったと聞いております。これは大変奇妙なことです。
 なぜ千代田区が参加していなかったのか。それに対する都としての所見とともに伺います。
都市整備局長答弁
 千代田区の対応についてであるが、本年三月の大手町まちづくり推進会議開催までは、区も事業スキームの検討に参加していたが、その後、区は、「公平・公正・透明性」の確保について、共通の認識に立っていないと主張し、この検討に不参加となった。
 その理由を、都から再三問いただしたが、具体的な内容が示されることはなく、区の経過説明などから判断すると、推進会議メンバーである地元地権者以外の企業の参加機会の確保を考えていたようである。
 しかし、都としては、本プロジェクトは民間の力により自らの街の再生を目指すものであり、本来地元地権者を中心とした取組であるべきと考えている。
 本プロジェクトの「公平・公正・透明性」について、都としては、国有地の売却条件の遵守、都市計画決定や事業認可などの公的手続きの実施、さらには都市再生機構による事業参画などにより、十分確保されていると考えている。
 したがって、区の主張は、本来の「公平・公正・透明性」とは方向性が違うものと認識している。

中村明彦
 区は本来、本プロジェクトを積極的に推進すべき立場と思いますが、区の協力体制などに問題はないのか。所見をお伺いをし、私の質問を終わります。
都市整備局長答弁
 区の協力体制についてであるが、先ほど述べたように、区は一時期、検討に参加していなかったが、その後、本年十月、都市計画手続きを進める期限を迎えたところで、現スキームで事業を推進することに同意した。
 しかしながら、円滑な事業化に向けた区の協力姿勢が未だ明確でないことから、本プロジェクトを協働して推進してきた地元地権者からは、不安の声も出ている。
 したがって、都としては、本プロジェクトの推進に向けて、区は、自らの役割を果たしていくべきと考えており、今後とも、あらゆる機会を通じて区に働きかけていく。