第1回定例本会議
-平成16年3月30日(火)-

討  論(案)
                     都議会民主党 中村明彦(台東区)


 私は、都議会民主党を代表して、第一号議案「平成十六年度東京都一般会計予算」に付帯決議を付し、その他知事提出の全議案に賛成の立場から、討論を行います。

 まず、第一号議案について申し上げます。
 「平成十六年度東京都一般会計予算」は、景気の穏やかな回復が見られる中での編成となりましたが、前年度比0.4%減の5兆7,080億円、一般歳出で前年度比1.2%減の4兆2,214億円となっております。これは、この間の景気回復傾向により都税収入の約4割を占める法人二税に1,161億円の増収が見込まれる一方で、銀行税の税率引き下げで昨年度比760億円、税制改正で同345億円のマイナス要因が働き、結果として56億円しか増収が見込めないためです。
 こうした厳しい財政状況にあっても、本予算では、治安の回復、福祉・医療の充実、中小企業・雇用対策、都市と環境の再生などの、緊急かつ重要な課題に施策を厳選して重点的に予算を配分しており、財政状況を勘案するならば、評価できるものとなっています。

 しかし、各自治体がこうした厳しい予算編成を余儀なくされている中にあって、国の怠慢は許されざるものです。小泉内閣の三位一体改革も、自治体には裁量の余地のない国庫負担金を削滅し、財源措置は国が配分権を持つ移転財源で賄うとあっては、中央省庁の官僚の言うがままであります。しかも、現場を無視した、戦略なき場当たり的補助金削減が横行しており、自治体への悪影響は看過できないものとなっています。国を変えなければ自治体も活きない、このことを肝に銘じなければなりません。

 なお、本予算に盛り込まれた新銀行への出資につきましては、この間の我が会派をはじめとした各会派の質疑を通じて、多くの懸念が払拭されてきましたが、ミドルリスクの分野に挑戦するという、これまでの日本の金融システムにはない新たな取り組みであることから、若干の懸念が残っていることは否めません。
 しかしながら、既存の金融機関が、融資におけるデフォルトの発生を極力回避し、今なお不良債権の処理に追われている状況の下で、新たな金融機能を求めている中小企業の期待を考慮するならば、挑戦するに値する取組であると考えます。       
 今後準備会社を発足させ、来年四月以降には本格的に事業を開始することになりますが、民間銀行として公平な競争を行うこと、東京都の再出資は行わないこと、株主として適切な監視を行うこと、そして、節目毎に経営計画を検証することによって、新銀行が市場秩序を乱すことなく、「技術力や将来性等に優れた中小企業を総合的に支援する」という本来の設立目的が適切に履行されるよう求めておきたいと思います。                      
                                          
 次に、第六十九号議案、「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」について申し述べます。
 青少年を取り巻く環境の悪化に少しでも歯止めをかけ、大人や親、子どもたちに警鐘を鳴らすという意味において、今回条例の改正は意義あるものと考えます。
 ただし、実際の運用においては、あくまでも青少年の保護・育成という観点において、慎重に取り扱うこととし、表現の自由等への過度の規制となることのないよう強く求めます。同時に、青少年の「居場所」について、社会がどのように提供していくのか、あるいは、教育の現場で非行・犯罪についてどう教えていくのかなど、多角的な視野に立った施策の展開を求めるものです。
 青少年が、非行や犯罪の誘惑に負けず健全に育つためには、規制のみに頼って青少年を見えないところに追いやるのではなく、社会とのコミュニケーションのパイプをより多く持たせ、青少年自身の判断能力、社会性を養うことこそが必要であることをあらためて申し添えます。


 次に、第九十五号議案「東京都食品安全条例」について申し述べます。
 私たちは、この間の質疑を通じて、本条例は「食品の安全を確保し、現在及び将来の都民の健康保護を図ること」を目的とし、その目的規定は「食品の安全確保は、都民が健康で豊かな生活を営む上で欠かせない基本的な条件の一つである」との認識を踏まえた結果であることを明確にして参りました。
 また、本条例の成立及び施行により、東京都における食品安全行政は、条例の基本理念でうたわれている「事業者責任を基礎とする安全行政」「科学的知見に基づく安全行政」 「都、都民、事業者の相互理解と協力に基づく安全行政」の三つをよりどころに展開されることとなります。
 そこで、条例の施行にあたって、今後、重要と考える点を申し上げます。
 まずは、食品安全確保のための施策は、健康局にとどまらず、広範囲にわたることから、全体の総合的・計画的な推進体制をしっかりと整備し、取り組むこと。
 次に、都、都民、事業者の相互理解と協力に基づく食品安全の確保に向けて、欠かすことのできない 「リスク・コミュニケーション推進のしくみ」 についてであります。リスクコミュニケーションを有効に維進するためには、三者が対等に企画・運営に参加し、その有効性を高めることを任務とする組織づくりが必要であります。
 安全評価を含めた、安全確保の全過程について、点検するこの組織、つまりリスクコミュニケーションの推進体制の早期整備が必要です。
 本条例の採決に当たり、この二点について可及的速やかに取り組まれるよう求めておきます。        


 次に、第百十三号議案「東京都労政事務所設置条例の一部を改正する条例」など関連条例について申し述べます。
 厳しい雇用情勢が続くなか、就職の相談、紹介、能力開発などをワンストップで行う 「しごとセンター」が今年の夏を目途に開設されます。年間就職一万件を目指しており、私たちも、このセンターが多くの成果を上げることを期待しています。
 こうした中で、雇用のセーフティネットである「労政事務所」を「労働相談情報センター」として再編する方針が出されておりますが、私たちは、東京の労働行政を進めるにあたっては、パートや派遣、契約社員の日正規労働の増加などといった今日の雇用状況の変化に的確に対応していくことが必要であると考えています。
 そのためには、「労働相談情報センター」において、労働相談の専門性の向上や情報の共有化を図ることなどにより、さらにきめの細かい労働相談を実施するとともに、事務所の立地についても、相談者にとって利便性のある場所に早期に設置されるよう求めるものです。   

 次に、第百二十二号議案「東京都港湾管理条例」について申し述べます。
 私たちは、都民の安全を守るという本条例の趣旨については評価するものですが、特に、第二十二条の第二項の規定については、規制対象が必ずしも明確ではなく、その運用によっては、東京港に入港できなくなる船が、広く解釈されるおそれがあることはわが会派の名取幹事長が代表質問でも述べたとおりです。
 東京都は「運用に当たっては、個々具体的な事案に即して取り締まり当局と十分調整の上、他に適当な手段がないと認められる場合には、港湾を利用させない措置をとる」と答弁しましたが、あらかじめ、海上保安庁などの関係機関と協議するなど、適正な手続きを踏まえた運用がなされることが必要です。
 また、私たちは、港湾利用に関するルールは、東京港だけでなく、他の自治体と連携して、東京湾全体で取り組むべきと考え、附帯決議の提案を他の会派に働きかけたところでございますが、提出するには至りませんでした。東京都におかれましては取り締まり当局と十分な調整と適正な手続きを踏まえることにより、港湾の利用を不当に制約しないよう求めるものです。


 次に、第百二十四号議案「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例」についてです。
 民間の賃貸住宅を退去する際の敷金精算のトラブルなどをめぐって東京都に寄せられる相談が増え続けるなかで、本条例が提案されたことは、適正な賃貸住宅市場を形成する上からも有効な施策であり、時宜にかなったものであると評価するものです。   ・
 本条例は、原状回復に関する基本的な考え方や維持・修繕に関する連結先などについて、宅建業者に説明義務を課しており、これらの制度が市場のルールとして定着していくことが求められます。
 私たちは、条例で対象とされている新規契約だけでなく、既存の契約においても、更新の際に必要な説明が受けられるようにするとともに、インターネット契約のように宅建業者が仲介しない物件についても、こうしたルールが適用されるよう、制度定着に向けた積極的な取り組みを求めるものです。
 また、この条例提案と併せて打ち出した「礼金・更新料ゼロ運動」についても、特に小規模なアパート経営者の理解を得るよう特段の配慮を行い、積極的に推進されるよう要望するものです。

 以上で、都議会民主党を代表しての討論を終わります。