財政委員会
-平成15年12月12日(金)-

○ 中村委員 
 平成十五年の五月に東京都は、日本経済再生のため、個人金融資産を有効に活用して、技術力や将来性にすぐれた中小企業を総合的に支提し、安全、有利な金融商品を提供するとともに、ITの活用により、利便性を向上させ、都民、国民が真に必要とする銀行を創設するという理念のもとでのプレス発表が行われたわけでございます。その後、十六年度中には免許の申請、営業の開始準備との計画がなされていて、その議論をしていたわけでございます。
 ところが、先月の中ごろ突然、ある新聞に外資系の信託銀行を買収という記事が報道されました。今までそういう議論は全くされていなかった。非常に、私どもは、どうなってしまうんだろうという当惑した中での経緯があったわけでございます。
 そうした中で、ビー・エヌ・ピー・パリバ信託銀行の買収ということに至ったわけでございますけれども、先般本会議で、私どもの青木政調会長が代表質問の中でも、買収に当たってのメリット、なぜ買収するのかということをお尋ねいたしました。その中で出納長からは、開業までの手順やコスト面で効率があるとのお答えをいただきました。いうまでもなく、新銀行について議会として判断するためには、買収についても個々の具体的な判断材料を提供していただく必要があると思うわけでございます。
 そこで、まず、買収について、何が、どのように効率的であるのか、具体的にお示しをいただきたいと思います。

○ 津島理事 
 新たに新銀行をつくる場合と買収の場合との比較でございますけれども、新たに新銀行をつくる、つまり準備会社をつくり、免許を取得するという場合には、この免許を取得するためのさまざまな準備事務が必要であることに加えまして、まず予備免許を取る段階、そして本免許と行くわけでございますけれども、この予備免許の取得がある程度確実にならなければ、例えば金融システムへの参加、バンク制への参加、こういった実務的な準備に着手できないというような手順上の問題が発生いたします。これが買収の場合には回避できる。
 次に、コストについては、例えば設立登記の際の登録免許税、金融機関に支払う出資金委託手数料、あるいは公証人に定款認証書を受ける際の費用、いろいろなコストが、新銀行を新規に設立する場合は出てまいります。買収の場合には、もちろん買収そのものに伴う事務とかコストは発生いたしますけれども、新規設立の場合に比較して相当効率的かつ低コストであり、メリットが大きいというふうに考えております。

○ 中村委員 
 確かに、新しく銀行をつくるというのは、申請、そしてまた認可、許可、そういうものは確かに手順は時間がかかるというのは十分承知しております。そうした中での一番最初の基本構想の中で、十六年度中にというようなのがあったわけですけれども、その中で、買収というもののメリット、今ご説明をいただきました。いろんなことの中で買収というのが一番メリットもある、コストも低く抑えることができるというようなことは多少理解できました。
 ただ、その中で、いろんな買収がありますけれども、今度の買収の手順ですね、それがなかなかよく見えてこないのでありまして、先般のこの発表されました資料によりますと、デュー・デリジェンスですか、非常に難しい言葉です、日本語にしますと買収調査という、そういうような資産状況を精査して価格を決定するというのが、このデュー・デリジェンスということなわけでございますけれども、具体的にこのいわゆる買収調査、どのような調査をしたのか、そしてまた、その結果どういうことが示されたのか、わかったのか、これをお知らせいただきたいと思います。

○ 関参事
 企業買収に当たっては、対象とする企業の資産内容や財務状態、取引関係、訴訟の有無など、資産、法律状況を確定させることが大前提でございます。そのための詳細な調査が買収調査、いわゆるデュー・デリジェンスでございます。
 この調査は、大きく、財務、法務に分けることができます。財務は、財務諸表を中心とした経理の全般を調査いたします。法務は、取引先の契約関係や各種業法の遵守状況などを対象に行うものでございます。
 今回、パリバ信託銀行に対しましてこの調査を実施することによって、資産価値から買収の適正価格が導かれるとともに、対象企業に法的なリスクが存在せず、買収に問題はないこと等が明らかになってまいりました。

○ 中村委員
 今の説明で、買収は効率的な手法である、かつまた、パリバ信託銀行については、全く買収するに当たって問題はないというような答弁でございますけれども、最初からいわゆる準備会社を設立して免許を取得して開業する場合、それに比べまして、今ある銀行ですね、営業している銀行を買収して開業する場合、効果としては全く同じものなのか。例えば新規設立に比べ、買収という方法で、先ほど冒頭にいいました、東京都が銀行を設立するその理念、この理念が変わってしまうのではないか。買収するのと新しく自分たちでつくるときと、いわゆる経営理念、融資するに当たっての中小企業に対する理念、このところが変わってしまっては非常に困るわけですね。その辺のところをちょっとご説明いただきたいと思います。

○ 関参事
 新銀行は、現在のパリバ信託銀行とは全く異なる新たな業務展開を行っていくものでございます。買収後、定款、業務内容、組織などを全面的に改正し、新銀行にふさわしい体制を整えてまいります。したがって、実質的には新銀行を新たに創設したのと同様でございまして、新銀行の掲げる理念は完全に実現でさるものと考えております。

○ 中村委員
 今、力強いお答えをいただきました。私どもが一番心配しているのは、理念が変わってしまっては、ただ単に民間の企業を公的機関が買収して、それで銀行業務をやるというような形になってはまた、今までの中小企業融資、日本の経済の再生につながっていかないなというところが一番心配されていたわけです。その部分が、今のお答えの中では、理念は変わってないという明確な答弁をいただきました。
 その中で、現在のパリバ信託銀行、営業挽模を縮小してやっているわけでございます。その中で赤字決算ということもいわれております。このような銀行を買収するに当たって、この赤字をどのように評価するのか。また、この銀行、買収するパリバ銀行ですね、これが不良債権があるのか、また、そういうものを引き継がなければいけないんだろうかというのもいろいろ問題になろうかと思うんですね。そのあたりで不良債権があるのかないのか、そしてまたそれはどうなっているのか、これをお示しください。

○ 関参事
 買収に当たりましては、先ほど申し上げました買収調査に基づき、資産から負債を差し引き、純資産を算定いたします。それが買収の基準価格となるため、欠損金を都が負担することはあり得ないということでございます。また、この銀行には不良債権は一切ございません。このことは買収調査において確認しているところでございます。

○ 中村委員
 不良債権がない銀行というのは、またすばらしい銀行だなというふうに感じますけれども、パリバ信託銀行の欠損金を都が負担することがないと今おっしゃいました。そしてこの銀行は、今話の中で不良債権は全くないと、すばらしい銀行かなという気もいたします。
 しかしながら、赤字企業、赤字なわけですから、赤字企業を買い取ることによって新銀行がこの赤字体質を受け継いでしまうのではないか、こういうような不安も残るわけでございます。これに対して何か対応を考えているのかお知らせください。

○ 関参事
 買収に当たりましては、預金等については引き継ぐものの、原則として既存業務を廃止いたします。また、人員の整理を前提として、現在パリバ信託銀行と交渉中でございまして、赤字体質を受け継ぐということはあり得ないと考えております。

○ 中村委員
 今、赤字体質を引き継ぐことはない、交渉しているということでございますけれども、この発表されました新銀行スキームによりますと、パリバとの基本合意は第四回定例会の後にやるということでございますけれども、そしてまた赤字体質を引き継ぐことはないということでございますけれども、どの辺まで交渉が具体的に進んでいるのか、そしてまた、今後はこのスキームのとおり行くのか、そういうようなスケジュールをお示しください。

○ 関参事
 現在、パリバ銀行側とは、買収調査に基づく財務内容や法的調査を終え、基本合意に向けた交渉を行っているところでございます。今後、四定後に基本合意を交わさせていただいて、一定で予算のご承認を経た後に、来年度当初に正式契約を締結したいと考えております。

○ 中村委員
 今までのパリバ信託銀行を買収するに当たっての、東京都の新銀行設立の基本理念も変わらない、メリットも多くあるとの説明を受け、理解ができたわけでございます。今後は、このスキーム、スケジュールに沿って作業を進め、高い技術力や将来性がありながら、担保が不足して金融機関から資金調達ができない中小企業を支援し、無担保融資を含む積極的な資金供給で企業の力を引き出し、経済の再生に結びつけていただきたい、このように願うわけでございます。
 次に、この銀行、スキームどおり行ったとして、この銀行の経営についてお尋ねいたします。
 我が党の代表質問でも、税金の再投入はあるのかないのかという話をいたしました。その中で知事は、税の再投入はしないと明言をされたわけでございますが、この銀行の事業計画、収支計画、これをお示しください。

○ 関参事
 この銀行の事業収支計画の一つの指標でございます経費率でございますけれども、これが一つのポイントになると思うんですが、ことし八月に日銀考査局が発表した全国銀行の決算状況のデータによりますと、全国銀行の経費率は五三・六四%、地方銀行と第二地銀を合わせた経費率は六二・八七%で、当銀行の基本計画にお示しいたしました開業後の経費率四九・二%は、地銀トップということで、非常に低コスト体質の銀行としてこの銀行を展開させていただきたいというふうに考えております。

○ 中村委員
 この銀行は店舗数も十店舗、そしてまた行員も二百三十人ぐらいですか、そしてまた契約スタッフ、そういうもので人数を極力少なくして運営していくというわけでございます。
 そういった中で、今報告のありました地銀の経費率六二%強ですか、今度の新銀行の方では、このスキームを見ますと、開業三年後では経費率が四九・一%という非常に効率的な内容になっているのかなと思うわけでございます。ぜひその目標数値を達成するように努力していただきたいなというふうに思うわけでございますが、その中で、この新銀行の事業収支計画、このスキームの中にあります、三年後には七十億円の経常利益を出す、単年度黒字になるというふうに示されております。融資は非常にリスクの高いように見受けられるわけなんですけれども、その中小企業融資、果たして七十億円の単年度黒字を出すことができるのか、この辺はどうなんでしょうか。

○ 津島理事
 銀行の全体の経営としての三年後の黒字でございますけれども、まず、新銀行の中心となる中小企業融資につきましては、信頼性と実績のあるさまざまなデータベースを活用いたしまして、リスク管理を内蔵した独自のスコアリングモデルに基づき、企業の信用リスクに見合った貸出金利を設定することにしております。
 さらに、業務運営にインターネットバンキングなどIT技術を最大限活用いたしまして、可能な限り事務の集中化を図り、行員を二百三十人と必要最小限にいたしまして、それから契約スタッフ三百十人、外部委託百五十人といたしまして、それらを積極的に活用するなど、低コストの事務運営に努めてまいります。
 こうした経営努力によって適正な利益を確保し、開業三年後に単年度黒字に転換することを見込んでおります。

○ 中村委員
 普通の一般企業でも、銀行からお金を借りるときには必ず経営指針、目標値を立ててくださいというようなことをいわれます。そしてその中で、三年目には必ず黒字転換できるような営業指針を出してくれというようなことを必ずいわれるわけですね。そういう中で、非常に、七十億円の単年度黒字という数値、目標というか、それに沿って実現を果たしていかなければならないというふうに思うわけでございますけれども、単年度黒字になっても、まだ累積赤字があるわけですよね。その累積赤字が黒字に転換する、累積が黒字に転換する、当然企業としては黒字転換していかなければならないわけですけれども、その見通しというのはどういうふうにお考えでしょうか、お示しください。

○ 関参事
 今後の業務展開の推移により変動もあり得ると考えられますが、開業三年目で黒字化を達成し、その後、資産の増加等につれて利益も上乗せされるものと考えられますので、おおむね開業五年後には黒字化すると見込んでおります。

○ 中村委員
 累積で五年後ですか、に黒字を見込んでくるというわけですけれども、当然、累積収支が黒字転換した場合、企業でいうならば、そこで配当というものをしなければならなくなってきます。これはどこの企業でもそうですね。その配当は、出資者である東京都、それからまた民間から、今いわれているのは五百億円ほどの出資を受けようという形になっています。当然、出資者に村しての配当というものを考えていかなければならないと思うわけですね。それとまたもう一つは、この銀行の本来の目的であります中小企業融資の枠組みの拡大、そういったものもあわせて考えていかなければいけないのかなというふうに思うんですけれども、まず、出資者に対する配当、これについてはどのようにお考えでしょうか、お示しください。

○ 津島理事
 配当に関するご質問でございますけれども、事業展開の中から生まれた新銀行の余剰の処分については、やはり政策目的を担った銀行であることから、融資条件の緩和とか、都民に貢献する新規事業への投資、こういったことにも総合的に考慮いたしまして、新銀行の経営として、新たな経営者が判断するということになると思います。

○ 中村委員
 確かにそうなんですけれども、新経営者が判断するのは当然なんですけれども、冒頭にいいました、この銀行の理念、都内の、または日本の経済を支えている中小企業、これに対して、他の金融機関でできなかった部分を東京都が設立する銀行で補てんしていこうという、その中で、元気出せ商店街ではないですけれども、元気出せ中小企業ということをうたい、融資をして経済の再生につなげていく。東京から景気の回復がという、そういう文言がございますけれども、その実践をしていただきたいのが、この銀行のまず基本理念ではないかなと思うわけです。
 それを先にやっていますと、今度は出資者に対する配当というものがどういう形になってくるかというのもありますけれども、ここら辺も、今担当理事が答えたのではなく、この辺もあわせて準備会社のときに考えていかなければいけないのではないかなというふうに思うわけです。そうしないと、出資しても配当が何もないんだというふうになってくると、民間出資、これは募れなくなってくることもあります。そしてまた、一千億円都税を投入するわけですから、都民に対しての説明、これもやはりなかなか行き届かなくなつていくのではないかなと思われますので、その辺は十分認識をしていただいて、総合的に判断していただきたい、このように思うわけでございます。
 そういうような中で、室長、ここまで、この銀行は非常に紆余曲折、いろんなことがありました。その中での新銀行、東京都の経済の再生のための思い入れ、また決意を簡単にお示しください。

○ 大塚出納長
 先ほどの、前段の理事からのご答弁を踏まえて、それを若干補足することを含めて今のご質問にお答えしたいと思いますけれども、中村理事ご指摘のとおり、この銀行の存在意義といいますか、これは知事から申し上げておりますけれども、社会貢献であります。その社会貢献の手法として、都民やあるいは中小企業にいろいろな成果の還元を行うということをいっているわけであります。
 成果の還元のやり方として、それは当然、一定の利益が出てきたときに、その利益を出資に対して配当を行う還元のやり方、あともう一つは、出てきたその利益をさらに都民あるいは中小企業に提供しているサービス、金融商品あるいは各種サービスがありますけれども、そのサービスの内容、質量をよくするために使うか、いずれにしても、どちらに使うかということになるかと思います。
 だから、その成果を還元するという基本的な姿勢は、それはどういう状況になってもこの銀行の基本的なコンセプトでありますから、それをどういう振り分けをするかというのは、これはそのときの経営の考え方があるでしょうけれども、利益を内部で使うのではなくて、外出しをしていくというその考え方というのは、準備会社の段階できちっと踏まえてやっていきたいというふうに思っています。
 それからもう一つ、この銀行というのは、例えば融資をベースに考えますと、ほかの領域では、ほかの現在の金融機関では充足されていない領域を中心に行いますので、それはある意味では非常にリスクが高いということです。それで、あわせて、五年後、十年後あるいは二十年後かわかりませんけれども、それは三十年後かわかりませんけれども、きちっと銀行として存続し得る、株式会社新銀行東京としての経営の健全性、そういう二つの、ある意味では両極の理念といいますか、荷物といいますか、それをしょってこの銀行は経営を行っていくわけであります。
 そういう意味で、一方でリスクをとる、一方で経営の健全性を確保するというのは、右と左との、ある意味では対立する観念でありまして、その二つの重荷を背負って仕事をしていくわけでありますけれども、その二つの理念の均衡点を、最適均衡といいますか、それをこの銀行はつかまえていかないと経営ができなくなる。どちから一方だけをやれば、もう一つの方は必ず、要するに難しくなるという、そういう経営になります。
 これを解決するためのポイントというのは、過日の代表執行役に予定している仁司が記者会見で申し上げましたけれども、一つは独自性であります。もう一つは効率性であります。その独自性と効率性という二つのコンセプトを駆使することによって、その両極の要請を満たすことは可能だというふうに私、考えているわけでありまして、そのために、先ほど来ご答弁を申し上げてきておりますように、英知を尽くし、努力の限りを尽くし、何としてもこの銀行の経営理念を実現する、実現し得る、しかもきちっと存在感があって存続できるような銀行を何としてもつくり上げていきたい。それによって都民、中小企業に貢献をしたいというふうに思っております。

○ 中村委員 ありがとうございました。終わります。